大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)3586号 判決

被告人 藤田隆

〔抄 録〕

被告人本人の控訴趣意について。

よつて按ずるに被告人に対する昭和三十年一月五日附起訴状を調べてみるのに右起訴状には公訴事実として第一の一、「被告人須田久雄は池上みゑより同人の岡田はなに対する金六万円の債権の取立方を依頼されたことを奇貨とし同人より右取立名下に金員を喝取せんと企て被告人藤田隆と共謀のうえ、被告人両名は昭和二十九年五月二十六日頃東京都中野区栄町通り一丁目十八番地被告人須田久雄の自宅において右岡田はなに対し被告人藤田は数回手拳にて顔面を殴打し、被告人須田は「どうだ、婆あ、俺達は警察なんか、たたきこまれたつて恐しくないんだ」「お前の家を燃やしてしまうぞ」「払うのか、払わないのか」等申し向け右岡田をして若しその要求をことわれば、更に如何なる危害を受けるやも知れずと畏怖せしめ、因つて同年六月十日頃同区栄町通り一丁目二十二番地横田七五郎方において同人より大原安積を介して金二万円の交付を受けてこれを喝取したものである」とあり、罪名恐喝、罰条刑法第二百四十九条と記載されており、また昭和三十年一月二十六日の原審第二回公判調書の記載によれば検察官は前記起訴状記載の罰条刑法第二百四十九条とあるのを同法第二百四十九条第一項と訂正し、被告人弁護人も異議なく裁判官は右罰条の訂正を許可し、更に裁判官は検察官に対し「前記起訴状の第一の(一)の公訴事実中『岡田はなに対し被告人藤田は数回手拳にて顔面を殴打し』とあるがこれは暴行を起訴する趣旨なのか」と釈明を求めたのに対し検察官は「暴行は恐喝罪の手段としてやつたので起訴しないのです」と釈明していること明らかである。然るに原審が被告人につき恐喝罪は成立しないと認定しながら暴行の犯罪事実を認定しこれに対し刑法第二百八条を適用したことは、結局検察官に訴因の変更、追加をさせないで突如裁判所が訴因を附加認定してその罪責を問うたものであり判決に影響を及ぼすべきこと明らかな訴訟手続に法令の違反があるものというべく原判決はこの点において破棄を免れない。

(中村光 脇田 鈴木)

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